現代では再現困難?石積み擁壁を解体せず残すべき価値と地震に強い職人技

※メインの写真は、大津閘門(琵琶湖疎水は日本遺産に登録)


皆さまこんにちは。

「石垣・石積み・各種擁壁の補修、補強」「やぎさんレンタル」「電気通信工事業」を展開している株式会社トーラスです。


石の形を見極め、一つひとつ積み上げられてきた石積み擁壁。古くなった擁壁を前にすると、「危なそうだからコンクリートに造り替えたほうがいいのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。


しかし、長い年月を経た石積みには、唯一無二の風情だけではなく、職人の技術や土地の歴史が刻まれています。さらに、既存の石積みを生かしながら安全性を高める補強工法も登場しています。


今回は、石積み擁壁を解体する前に知っておきたい価値と、古い石積みを生かす補修・補強についてご紹介します。




■風情ある風景の裏に潜む「石積み擁壁」の真価



石積擁壁内部空洞が広がっており補強跡が目立たない様にモルダムを注入。


自然石を積み上げてつくられた石積み擁壁には、コンクリートにはない独特の表情があります。庭や建物の周囲に長く残されてきたのも、石そのものの色や形が風景に豊かな奥行きを与えるからです。


石積みを近くで見ると、石の色も形も一つひとつ異なることがわかります。その不規則な凹凸ゆえに陰影が生まれ、フラットな面が続くコンクリート擁壁に比べ、壁面そのものに奥行きが感じられるのも特徴です。こうした石積みの風情は、周辺の草花や樹木の存在感も引き立てます。


また、石積みは、年月を重ねるうちに石の色合いが変わり、ときには苔むすことも。その土地で採れた石が使われているものもあり、地域によって異なる色や石肌を楽しむことができます。石積みは、地域の風土や歴史を宿す存在なのです。


こうした表情をもつ石積みは、造り替えようとしても同じ姿をそのまま取り戻せるものではありません。擁壁としての安全性だけでなく、今ある風景の一部として価値を見直してみることも大切です。


こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

コンクリートにはない魅力|石積み擁壁が景観と地盤を同時に守る理由

https://j-torus.co.jp/blog/blog/215993




■後継者不足で二度と造れない?「石工(いしく)」の職人技とそのすごさ


石積みの価値は、時間が刻まれた石そのものだけではありません。形のそろわない自然石を見ながら、どの石をどこに据えるかを判断してきた職人の技術にも価値があります。こうした昔ながらの石積みを手掛けられる職人は限られており、技術を次世代へどう受け継ぐかも課題になっています。



石の「面」と「噛み合わせ」を読む職人技


石積みでは、石の大きさだけでなく、表に見せる「面」や奥行き、隣の石との噛み合わせを読みながら、一つひとつ位置を決めていきます。


石を単純に積み重ね、その重量だけで土を押さえ込んでいるわけではありません。石同士を噛み合わせ、背面の栗石や地形との関係を見ながら、崩れようとする力をうまく逃がして安定させる。その土地を知り尽くした昔の職人たちは、長年の経験を重ねながら、こうした積み方を磨いてきました。


加工していない自然石を使う「野面積み」、石を割って形を調整する「割石積み」など、使われる石材や積み方にも地域ごとの違いがあります。身近で採れる石を使い、その土地の地形に合わせて積む。そうした仕事の積み重ねが、各地に異なる石積みの姿を残してきたのです。


2018年の西日本豪雨では、愛媛県内でも1000カ所近くの土砂崩壊が報告されました。一方、伝統的な石垣については、地元農家への聞き取りで「崩壊した箇所はなかった」と紹介されています。長年培われてきた石積みの技術には、現代にも学ぶべき先人の智恵が詰まっています。


こちらの記事でも詳しくご紹介しています。


日本の棚田を守ってきた石垣技術|城から農地へ受け継がれた先人の知恵

https://j-torus.co.jp/blog/blog/218428



一度壊すと再現が難しい「建築・土木的資産」


こうした石積みを、一度取り壊して同じ姿に戻すのは容易なことではありません。石積みは、工業製品のように同じ規格の材料を組み立てれば再現できるものではなく、石の形や地形を読みながら積み上げた職人の仕事だからです。


使われている石材、その配置、積み方まで含めて、その土地に合わせてつくられた一つの建築・土木的資産といえます。古いからという理由だけで撤去する前に、今ある石積みがどのようにつくられ、どのような状態にあるのかを確かめることが大切です。




■固めないから強い?「変形追従性(柔構造)」


豪雨により橋台の石積が洗堀され一部欠損した状況。


石積みの構造を考える際に注目したいのが、「変形追従性」です。コンクリートのように壁全体を硬い面として一体化させる構造とは異なり、石積みでは個々の石や背面材料が組み合わさって壁面を構成しています。



地盤の動きに追従する「柔構造」

一般的なコンクリート擁壁は、壁全体を一体化させた「剛構造」です。一方、石積みは石同士にわずかな動きの余地があり、地盤が微小に変形した際には、その動きに追従しながら力を受ける「柔構造」の性質をもっています。


つまり、一枚の壁で受け止めるのではなく、石や背面材料がわずかに動くことで、揺れの力を吸収・分散できるのが特徴です。昔の石工は現代の構造計算がない時代から、石の形や地形を読み、石同士を噛み合わせながら壁を築いてきました。ここにも、長い経験から培われた石積みならではの知恵があります。


石積が持ち堪えられるのはわずかな挙動。

深度6以上の地震は気象庁の分類で「極めて危険」とされており、この様な応力がかかった際には石積の遊びの範囲を超えて局所破壊から全体破壊へと繋がっていきます。


モルタルやコンクリートなどで補強されていても石積内部まで補強していないと空石積みと同じ様な結果になります。東日本大震災や熊本地震でも多くの被害が確認されています。石のずれやはらみ、内部の空洞化などが見られる場合には、現在の状態に合わせた補強が必要です。



柔構造の特徴を生かしながら補強する「モルダム工法」

そこで選択肢となるのが、石積みを全面的に撤去せず、既存の構造を生かしながら内部を補強する方法です。


トーラスが採用する「モルダム工法」は、劣化した既存石積みの内部に石積み専用の充填材を注入し、接着補強する特許工法です。排水機能を確保しながら施工でき、特許第5686446号を取得、NETISにも登録されています。


長年残されてきた石積みの形や風合いを生かしながら、弱くなった部分には現代の技術で手を加える。石積みがもつ柔構造の特徴を生かしつつ、内部補強によって弱点を補うことができます。


トーラスでは、戸建ての石積みから寺院、河川護岸など、さまざまな条件の石積み擁壁を施工してきました。実際の補修・補強については、施工事例もご覧ください。


▶最新の施工事例一覧

https://j-torus.co.jp/exemple


こちらの記事でも解説しています。


その石積み・石垣は安全なのか?安全性や地震による影響を解説

https://j-torus.co.jp/blog/blog/172031


石積み擁壁の補強費用は?「作り替える」より「補強」特許技術でコストを抑えた長寿命化を実現

https://j-torus.co.jp/blog/blog/210513




■解体時の「地盤リスク」回避と脱炭素時代に合致する「サステナビリティ」


石積み擁壁を解体して造り替えるとき、考えるべきは費用だけではありません。背面地盤への影響に加え、廃材の発生や新しい資材の使用による環境負荷にも目を向ける必要があります。



解体・掘削によって生じる地盤へのリスク


擁壁は、その背後にある地盤を支えています。既存の石積み擁壁を解体して新しく築き直すには、背面の土を掘削しなければなりません。


ここで気をつけたいのが、掘削による地盤の緩みです。特に住宅や道路が近い場所では、周囲の家屋や道路にまで影響が及ぶおそれがあります。そのため、土留めなどの仮設工事も含め、周辺の地盤を見ながら慎重に施工する必要があります。


既存の石積みを残したまま補修・補強できれば、こうした大がかりな解体や掘削そのものを避けられます。



既存の石積みを残すことは環境への配慮にもつながる

美咲町大垪和西 案山子さんと棚田


石積みを解体すれば、石材やコンクリートなどの廃材が発生します。新しいコンクリート擁壁を築くには、新たな資材の製造や運搬も必要です。国土交通省でも、建設分野のカーボンニュートラルに向けて、コンクリートをはじめとする建設資材の脱炭素化を進めています。今ある構造物を補修しながら長く使うことは、資源を有効に生かす方法の一つです。


また、長い年月を経た石積みのなかには、周囲の植生と共存しながら、小さな生き物のすみかとなっているものもあります。


植物による遮光や蒸発散は、ヒートアイランド現象の緩和につながります。石積みそのものに冷却効果があるわけではありませんが、周囲の植生も含めて保全することは、敷地内の小さな生態系を守るうえでも有効です。


古いものをすべて新しい材料へ置き換えるのではなく、使えるものは生かし、必要な部分に手を加える。石積み擁壁を補修して使い続けることには、安全面だけでなく、資源や環境を次の世代へつなぐというかけがえのない価値もあるのです。




■石積み擁壁は「壊す」前に、残せる方法を考えてみませんか?



古い石積み擁壁を前にして、「危険かもしれないから撤去したほうがいい」と考えるのは無理もありません。しかし、そのイメージだけで判断すると、長い年月をかけて受け継がれてきた石材や職人の技術、周囲の景観や環境まで失うことになります。


もちろん、安全性を確認することが何より大切です。だからこそ、最初から解体・新設だけに絞るのではなく、現在の石積みの状態を調べ、補修・補強によって残せるかどうかを見極めることが重要です。


株式会社トーラスでは、さまざまな種類の石積み・擁壁に向き合ってきた経験をもとに、既存の石積みを生かした補修・補強を行っています。なかでも、石積み内部から接着補強する「モルダム工法」は特許を取得した専門工法です。現代の補強技術を組み合わせることで、安全性を高めながら、昔ながらの職人技術や石積みがもつ景観・環境の価値を次の世代へ引き継ぐことができます。


「この石積みは本当に壊さなければならないのか」「今の姿を残したまま補強できないか」と迷っている方は、撤去を決める前にぜひ一度トーラスへご相談ください。

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ヤギさんレンタルでもなじみ深い株式会社トーラスの本事業は、

石積み・石垣や斜面の補強工事です。


とりわけ特許工法である「モルダム工法」により、従来の石積み補強(石垣補強)工事のデメリットであった、「接着力の弱さ」「内部浸水による水圧上昇の倒壊に対応できない」など、これらの弱点を補った高品質な補強工事を、法人様向けに提供しています。


百聞は一見に如かず。

ぜひ一度、弊社の補強工事実績をご覧ください。


最新の施工事例 一覧

https://j-torus.co.jp/exemple


特許工法の詳しい解説ページはこちらへ

・モルダム工法

https://j-torus.co.jp/isizumi


・PDR工法

https://j-torus.co.jp/PDR


余談ですが、副事業として「ヤギさんレンタル」も実施中!

ヤギさんをレンタルして、何するの!?と気になる方はこちらへ

・ヤギさん販売&レンタル

https://j-torus.co.jp/scenery


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参考資料

国土交通省「宅地擁壁について」

https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_tobou_tk_000060.html


国土交通省「宅地擁壁の復旧技術マニュアル」

https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_tobou_tk_000068.html


国土交通省「建設分野のカーボンニュートラル」

https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000149.html


国土交通省「緑による建築・街区空間の熱環境改善効果について~ヒートアイランド現象の緩和をめざして~」

https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/04/040812_.html


農林水産省「環境との調和に配慮した事業実施のための調査計画・設計の手引き(案)」

https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/nousin/seibibukai/gijutu_syoiinkai/h13-4/pdf/data3-3.pdf


地球守「崩れない石積みとは?―風土を育む土木技術 石積み・石垣編 第1回―」

https://chikyumori.org/2019/03/31/%E5%B4%A9%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E7%9F%B3%E7%A9%8D%E3%81%BF%E7%AC%AC1%E5%9B%9E/


土木学会 地震工学委員会「石積擁壁の耐震補強対策に関する研究小委員会」

https://committees.jsce.or.jp/eec213/